プレステップシリーズ17 憲法

日本国憲法の将来を考えるための憲法テキスト、待望の改訂版!

プレステップシリーズ 17

憲法

著者 駒村 圭吾=編著
判型・ページ数 B5判 並製 176ページ
定価 本体1,800円+税
出版年月日 2018年2月刊
ISBN 978-4-335-00097-3 C1332

 

概要

日本国憲法の将来を考えるための憲法テキスト、待望の改訂版!

2017年10月の衆院選で「踏み絵」と呼ばれる論点になった改憲。

その一方で、なぜ憲法がそんなに重要なのか、そもそも立憲主義とは何なのかを理解している国民はどのくらいいるでしょうか?

憲法の本質が多くの国民に理解され、真剣に議論されることが、かつてないほど重要になっています。

憲法の現状と課題を若者の視点から整理して大好評の本書が3年ぶりに待望の改訂。

初版から8頁増えて、最新の論点を臆すことなく盛り込みました。

目次

第2版まえがき日本国憲法の将来は、この本を手に取られたみなさまにかかっています
1章立憲主義ってそんなに大事なの?(憲法の基礎)
2章政治に参加してみよう!(選挙と参政権)
3章法律はどうやって作られる?(国会の役割)
4章内閣は政治の主役か、脇役か(行政権と議院内閣制)
5章裁判所の役割を知ろう!(司法権と裁判制度)
6章天皇制とは何だろう?(天皇制)
7章平和について考えてみよう!(平和主義)
8章人権ってどんな権利だろう?(人権の理念・歴史・特質)
9章それって憲法問題?(人権総論)
10章さまざまな価値観を尊重するために(信教の自由)
11章スクープなら何を書いても許される?(表現の自由)
12章どこで何をして暮らしてもいいの?(経済的自由)
13章もしも逮捕されたら?(人身の自由)
14章もっと支え合える社会へ(社会権)
15章自由って、何をしてもいいってこと?(幸福追求権)
巻末付録:日本国憲法全文

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はじめに 著者からのメッセージ

日本国憲法の将来は、この本を手に取られたみなさまにかかっています

2017年、日本国憲法はその施行から70年を迎えました。人間でいえば70歳ということで赤いちゃんちゃんこを着たのがすでに10年前、今や老境にさしかかったということになりますが、憲法は、有限の人生を歩む生身の人間ではなく、「人類普遍の原理」(前文)、「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」(第98条)を保障する法典です。永遠に年齢を重ね続けるはずのものといえるでしょう。ですから、“70年もたったのだからそろそろ変えてもいいじゃないか”、“70年間一度も改正されていないのはおかしい”、という言い方が“おかしい”のはおわかりいただけると思います。

ここ数年、日本国憲法を改正しようとする動きが加速しつつあります。2017年9月、自由民主党憲法改正推進本部は、安倍晋三首相の9条改憲案をたたき台とした草案と、従来の党改憲草案の双方を並行して議論を深めていくことを決めました。10月22日に行われた総選挙で自民党が圧勝し、自公の与党は定数3分の2を超え、希望の党、日本維新の会を含むいわゆる改憲勢力は衆議院の8割を制することとなりました。安倍首相は2020年までに改憲を実現したいとの意向を持っているようです。

このように日本国憲法の改正が具体的な政治日程に上りつつある中、ちまたには、「憲法あるいは憲法学者は現実と遊離した夢物語を語っているだけだ」、「憲法なんかよりも、主権者国民の議論と参加による民主政治の方が国の運命をあずけるのにふさわしい」といった主張がたびたび聞かれるようになりました。ここで、あえて誤解をおそれずに言えば、憲法はそもそも現実と遊離した夢物語であります。法は現実から距離をおくからこそ、現実を誘導し、現実にしっかりとお灸をすえる役割を果たすことができるのです。そう、憲法を含む「法」と「現実」・「政治」とは本質的にそりの合わないものなのです。私たちは、両者の緊張関係の中で、社会の安定や自由の確保を追求してきました。「現実」や「民主政治」を重視するひとたちが、憲法なんて面倒くさいものは多数決の力で吹っ飛ばしていこうと考えるのであれば、私たちは社会の安定的な発展も自由な生活も失うことになるでしょう。

そうではなく、憲法と現実がそりが合わなくなった場合、まず考えるべきなのは、現実を憲法に合わせることです。法を政治や現実の上におく「法の支配(rule of law)」という思想は、権力の暴走や欺瞞に苦しんできた人類がようやく到達した、文明史上最大の発明と言っていいでしょう。

もちろん、現実と憲法の溝が決定的に広がった場合には、憲法改正を真剣に考えることになるでしょう。法と現実が完全に一致すれば、法は不要になりますが、他方で、法と現実が完全に乖離すれば、法は不可能になります。現実と法の折り合いをつける場面というのも究極的にはあるでしょう。とはいえ、憲法改正についてはあまりにも軽い発言が目につきすぎます。「とりあえずオリンピックの年を目標にしよう」などという人もいるようですが、憲法改正は国立競技場の建て替えではありません。主権者である国民が自ら議論し、いままでのマインドセットを根本から変えるような大きな運動をともなう必要があります。それほどのことをやってようやく変えられるものなのです。

* * *

冒頭の「日本国憲法の将来は、この本を手に取られたみなさまにかかっています」という言葉は、本書の初版のはしがきのトップに記したものです。おかげさまで本書も読者の支持を受け、ここに第2版を公刊するはこびとなりました。が、冒頭のこの言葉を変える必要はないと考えております。いや、むしろ次のように言い換えるべきでしょう。

日本国憲法の将来は、
今まで以上に、
この本を手に取られたみなさまにかかっています。

2018年1月
駒村 圭吾